《仮面城(日文版)》

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仮面城(日文版)- 第5部分


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「ああ、文彦よく帰ってきたわね。おかあさんは心配で心配で……それに、|金《きん》|田《だ》|一《いち》先生も、けさのテレビを見て、ふしぎに思ってきてくだすったのよ。あまりおそいから、いま迎えにいっていただこうと思っていたところなの」
 そういうおかあさんのうしろから、
「や、やあ、ふ、文彦くん、お、お帰り」
 と、顔をだしたのは、たいへん風変わりな人物だった。よれよれの着物によれよれのはかま、それにいつ床屋へいったかわからぬくらい、髪をもじゃもじゃにして、少しどもるくせのある、小柄でひんそうなひとなのだ。
 そのひとはにこにこしながら奥から出てきたが、ひと目文彦の顔を見ると、
「や、や、どうしたんだ、文彦くん? き、きみはまるで、ゆ、ゆうれいでも見たような、顔をしているじゃないか」
 ああ、それにしてもこの金田一先生というのは、いったい何者なのだろうか。
 ひょっとすると諸君のなかには、もうこの名を知っているひとがあるかもしれないが……。

     名探偵、|金《きん》|田《だ》|一《いち》|耕《こう》|助《すけ》

 金田一耕助。――と、いう珍しい名まえは、そうざらにあるものではない。だから諸君のなかにもその名を聞いて、ハハアと思いあたるかたもあることだろう。
 名探偵、金田一耕助! そうだ。そのとおりなのだ。みなりこそ貧弱だが、顔つきこそひんそうではあるが、金田一耕助といえば、日本でも一、二といわれる名探偵。その腕のさえ、頭のよさ、いかなる怪事件、難事件でも、もののみごとに、ズバリと解決していく推理力のすばらしさ。
 その金田一耕助は、むかしから文彦のおとうさんとは、兄弟のように親しくしている仲だったが、きょう、はからずもテレビのたずねびとの時間に、文彦の名を聞いて、ふしぎに思ってたずねてきたのだった。
「文彦くん、どうしたんだね。それできみは、大野健蔵というひとのところへいってきたのかね」
「はい、いってきました。でも、先生、それがとてもみょうなんです」
「みょうというのは……?」
 そこで文彦は問われるままに、きょう一日のふしぎなできごとを、くわしく話して聞かせた。途中で出会った気味の悪い老婆のこと、大野老人のけがのこと、ダイヤがたのあざ[#「あざ」に傍点]を眨伽椁欷郡长取ⅴ昆ぅ浃违螗挨韦长取ⅳ饯欷椁蓼课餮螭韦瑜恧い韦胜恕ⅳ坤欷欷皮い毪瑜Δ蕷荬筏皮胜椁胜盲郡长趣胜嗓颉ⅳ猡欷胜挙筏郡ⅳ郡馈ⅴ荪饱氓趣韦胜摔ⅳ搿⒒平黏涡∠浃韦长趣坤堡稀ⅳ嗓Δ筏皮庠挙工长趣扦胜盲俊¥饯欷趣いΔ韦愦婴趣韦郡ぜs束があるからなのだ。
 金田一耕助は話を聞いて、びっくりして目を丸くしていたが、それにもましておどろいたのはおかあさんである。おかあさんはまっ青になって、
「まあ、そ、それじゃ文彦、そのひとはおまえの左腕にある、あのあざ[#「あざ」に傍点]を眨伽郡趣いΔ巍
「そうです。おかあさん。そして、これがあるからには、まちがいないといいましたよ」
「まあ!」
 おかあさんの顔色は、いよいよ血の気を失った。金田一耕助はふしぎそうにその顔を見守りながら、
「おくさん、なにかお心当たりがありますか?」
「いえ、あの……そういうわけではありませんが、あまり変な話ですから……」
 おかあさんの声はふるえている。おかあさんはなにか知っているらしいのだ。なにか心当たりがあるらしいのだ。それにもかかわらずおかあさんは、文彦や金田一探偵が、なんどたずねても話そうとはしなかったのだった。
 金田一探偵はあきらめたように、もじゃもじゃ頭をかきまわしながら、
「なるほど、するとその老人は、文彦くんの左腕にある、ダイヤがたのあざ[#「あざ」に傍点]を眨伽俊¥趣长恧饯欷殚gもなく、だれかがダイヤのキングをスギの木に、くぎづけにしていったのをみると、ひどくびっくりしたというんだね」
「ええ、そうです、そうです。それこそ気絶しそうな顔色でしたよ」
「そして、客間のよろいのなかに、だれかがかくれていたと……」
 金田一耕助はまじろぎもしないで考えこんでいたが、
「とにかく、それは捨ててはおけません。おくさん、ぼくはこれからちょっといってきます」
「え? これからおいでになるんですって?」
「先生がいくなら、ぼくもいきます」
「まあ、文彦」
「いいえ、おかあさん、だいじょうぶです。こんどは先生がごいっしょですもの。それにぼく、いろいろ気になることがあるんです。先生、ちょっと待っててください。ぼく、大急ぎでごはんを食べますから」
 それから間もなく文彦は、金田一探偵といっしょに、ふたたび家を出たが、ああ、そのとき文彦がもう少し、気をつけてあたりを見まわしていたら!
 文彦と金田一探偵が、急いで出ていくうしろすがたを見送って、やみのなかからヌ盲瘸訾皮郡韦稀ⅳⅳⅰⅳ胜螭趣ⅳ文Хㄊ工い韦瑜Δ恕菸钉螑櫎い肖ⅳ丹螭扦悉胜い¥肖ⅳ丹螭悉栅郡辘韦工郡姢à胜胜毪韦虼盲啤ⅴ衰骏辘葰菸稅櫎ばΔい颏猡椁工取ⅴ偿去偿趣趣膜à颏膜い啤⑽难澶渭窑韦郅Δ亟扭い皮い盲俊
 そこにはかぜをひいたおかあさんが、たったひとりで|留《る》|守《す》ばんをしているはずなのだ。

     よろいは步く

 さて、そういうこととは夢にも知らぬ文彦と金田一探偵は、電車にのって大急ぎで成城までかけつけたが、そのあいだ金田一探偵は、一言も口をきこうとはしなかった。
 考えぶかい目のいろで、ただ、前方を見つめたきり、しきりに髪の毛をかきむしっている。そういうようすを見るにつけ、文彦にもしだいに事の重大さが、ハッキリとのみこめてきた。この名探偵は、なにかに気がついているらしいのだ。ハッキリしたことはわからなくとも、なにかしらぶきみな予感に胸をふるわせているのだ。
 それはさておき、文彦と金田一探偵が、成城についたのは、夜の八時ごろのことだった。
 幸い今夜はおぼろ月夜、成城の町を出はずれると、武蔵野の林の上に満月に近い丸い月が、おぼろにかすんでかかっている。あたりには人影一つ見あたらない。
 ふたりは間もなくきょう昼間、ぶきみな老婆が手をあらっていた、あのやぶかげの小道にさしかかったが、そのときだった。金田一耕助がとつぜん、ギョッとしたように立ちどまったのである。
「先生、ど、どうかしましたか?」
「シッ、だまって! あの音はなんだろう」
 金田一耕助のことばに、文彦もギョッと耳をすましたが、するとそのとき聞こえてきたのは、なんともいえぬ異様な物音だった。
 チャリン、チャリンと金属のすれあうような音、それにまじってガサガサと、雑草をかきわけるような物音が、林の奥から聞こえてくる。たしかにだれかが、林のなかを步いているのだ。しかし、あのチャリン、チャリンという物音はなんだろう。
 金田一探偵と文彦は、すばやくかたわらの木立に身をかくすと、ひとみをこらして音のするほうを見ていたが、やがてアッという叫び声が、ふたりの口をついて出た。それもむりはなかった。ああ、なんということだろう。こずえにもれる月光を、全身にあびながら、林のなかを步いているのは、たしかにきょう文彦が、あの洋館の客間で見た、西洋のよろいではないか。
 西洋のよろいはフラフラと、まるで|夢撸Р≌摺钉啶妞Δ婴绀Δ筏恪筏韦瑜Δ恕⒘证韦胜虿饯い皮い¥饯筏啤ⅳ饯我蛔悚搐趣恕ⅴ隶悭辚蟆ⅴ隶悭辚螭取⒔鹗簸韦栅欷ⅳσ簸工毪韦馈H恧洗氦卧鹿猡颏ⅳ婴瓢足y色にかがやき、そのうえに、木々のこずえのかげが、あやしいしま[#「しま」に傍点]もようをおどらせている。
 あまりのことに、さすがの金田一探偵も、しばらくぼうぜんとしてこのありさまをながめていたが、やがてハッと気をとりなおすと、バラバラと林のなかにとびこんだ。
 と、その物音に西洋のよろいは、ハッとこちらをふりかえったが、つぎの瞬間、
「キャ茫 
 それこそ、まるできぬをさくような悲鳴をあげると、クルリとむきをかえて、林の奥へ逃げだした。
「待て!」
 金田一耕助ははかまのすそをさばいて、そのあとを追っかけていった。相手はなにしろ重いよろいを着ているのだから、すぐにも追いつきそうなものだが、それがそうはいかなかったのは、金田一探偵の服装のせいだった。
 林のなかには雑草が一面にはえている。またあちこちに切り株があったり、背の低いカン木がしげっている。それらのものがはかまのすそにひっかかるので、なかなか思うように走れないのだ。
「先生、しっかりしてください。だいじょうぶですか」
「ちくしょう、このいまいましいはかま[#「はかま」に傍点]め!」
 いまさら、そんなことをいってもはじまらない。
 こうしてしばらく林のなかで、奇妙な鬼ごっこをしていたが、そのうちに、さすがの金田一耕
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